ゾウになる夢を見る

ぴったりくる言葉をさがすためのブログ。日々考えたこと、好きなこと。映画や本の話もしたい。

永久に完成しないものの中にいる

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 Aセク・ノンセクというカテゴリー以前に、わたしはわたしで、好きなものや思うことがある。
大まかなことは書きだしたから、アセクシュアルに直接関わること以外も書いていきたい。

 

自分の好きなこと、熱心に取り組んでいることを改めて思い浮かべてみて、「全部完成しないものばかりだな」と思った。
わたしは花や野菜を育てていて、時々お菓子を作る。
これを「趣味は園芸とお菓子作りです」というと、何かを育て上げる、作り上げることが好きなんだなと思うんじゃないだろうか。もし趣味を聞かれてそう答えている人がいたら、ちょっと、おぉ…(すごいな)と思ってしまう。
でも、わたしが好きなのは育て上げることでも、作り上げることでもない。むしろ、育て上げようとして、作り上げようとして、「うまくいかない」ことの方だ。

野菜や花は苗を買うこともあるけど、たいてい種から育てる。そして、大事にしている品種は次の年のために種を採る。種は良さそうな株や実から選んで採るので、理論上は自分が選んだ形質が引き継がれた品種を残していける。
種から育てて、種を採る。そのプロセスも好きなのだけれど、それ以上に夢中になるのは、毎年違う気候の中で何をどう育てるかということだ。

 夏野菜は、暖かい地方が原産のことが多い。
トマトやナスのようなナス科の植物は、植え付ける数か月前から種をまいて、苗を作る。
わたしは大体2月の中頃に種をまき始める。発芽には30度くらいの温度が必要で、はじめはうまく発芽させられず、どう保温するか試行錯誤した。
うまく発芽させられるようになっても、毎年寒さが違うので、本当に芽がでるかどうか自信がなくて、芽が出た時には毎年のことながらすごくうれしい。
外で育てられる時期になっても、条件は毎年違っていて、今年のように早く気温が高くなることもあれば、悪天続きで日光不足や病気になってしまうこともある。
同じように春、夏、秋、冬が来ても、毎年違う気候だから、自ずと毎年違う条件になる。
もちろん、わたし自身の経験や知識も変化するので、土や肥料、栽培方法をその都度試すことになる。
プロは違う条件で同じものを作り続けられる人だと思うが、それはつまりプロにとっても「いつも違う」のが当たり前ということで、日曜園芸家のわたしは、永遠といっていいほど、毎年違うことに四苦八苦し続けるのだろう。

お菓子作りも同じで、お菓子を作るプロセスや食べることが好きなわけではない。
いや、プロセスが好きだから繰り返すわけだけど、プロセスそのものより繰り返すことが好きということ。
主に焼き菓子を作る。
まず、オーブンや使う素材のくせをつかむのにずいぶんと時間がかかる。どうすれば、どうなるのか、そのデータを繰り返し焼くことで集めていく。
それなりに形にはなるけれど、毎回違うものができて、違う改善点が見つかる。もう少し長く焼いてはどうか、卵は大きすぎはしなかったか。できたものを見直して、次こそとチャレンジすることがとても楽しい。
園芸もお菓子も、まだ納得のいくものができたことはない。
「あともう少しこうだったら最高だったかな」という感じで、完成には至らない。

 

あとはそう、研究。
今はあと1,2年で研究を仕事にできたらと奮闘している。
実験やデータを取るタイプではないので、自由度は高い方だと思う。
だから、研究成果をどう上げていくか、ということよりも、研究成果を上げていくために自分をどこに、どう持っていくかの方が重要かもしれない。
成果を出す必要があるので、毎年口頭発表や論文発表をする。つまり、今取り組んでいる研究の成果は限られた時間の中で形にしていかないといけない。
もう少し、この文献をここまで読み込めたら…とか、あそこまで考察の中に含められたら…とか、もう少しこういう風にまとめられる能力があれば…とか、「本当はこうできていれば」をあげていたらキリがない。
限られた時間と能力の中で、研究を進め、自分のスキルも地味にだが上げていく。
一つ一つ形にはするけれど、理想の完成には絶対にならない(できない)。
それは悔しいことでもあるけれど、次への可能性があるということでもある。

 

あげればまだまだあるけれど、わたしはずっと終わらないものを、完成するはずのないものを、いつか出来上がることを目指して、全く同じではない条件の中で試行錯誤しつづけることに夢中になっている。
好きだからできるのだろうけど、本当に好きかと聞かれれば、(特に研究は)楽ではないので、面白いという方が正しい。
ずっと完成しないもの、ずっと決まらないもの、ずっと揺れ動いているもの。
白黒つけた方が、はっきりさせた方が、わかりやすい方がいいもの、好まれるものもたくさんあるけれど、そうじゃないものは結果をずっと引き延ばしてくれて、永遠に楽しませて、夢中にさせてくれ続けるような気がする。
それにいつまで着いていけるか、わからないけどね。