ゾウになる夢を見る

ぴったりくる言葉をさがすためのブログ。日々考えたこと、好きなこと。映画や本の話もしたい。

かかった時間の大半は準備期間

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 一つ一つやっていくしかない、ということを時々忘れてしまう。一足飛びにできることなんて、何もないのに。あるとすれば、その場限りの、その程度のものでしかない。
今までより大がかりな論文にかかろうとしていて、その構成だけを練ってもうすぐ季節が一巡してしまうのではないか、とはたと気づいた。たぶん、すでに5パターン以上作った。
色々なことで落ち着いて取り組めず、さぁ、と思ったらこの暑さ。残り時間を考えて、急に焦りだしたのが昨日のこと。仕方ないので早めにたっぷりと寝て、4種類くらいのタスクの計画を立て、先のことが見通せるようになったら、なんだ、大丈夫じゃないか!と俄然やる気モードになったのが今日のこと。自分が戻ってきたなと思う。だいたいいつも、こんな感じ。

 

 

思えば、完成させたいものにかける時間の大半は、作業にとりかかるための準備期間なのだ。暑さぼけしているのか、もうずいぶんやってきたことの手順も忘れてしまっている。
たとえば、雑誌に投稿するくらいの(2万字程度)論文の執筆には、わたしの場合、最低でも2か月は必要だ。でも、その期間の中で実際に書いているのは4分の1くらいで、その他の期間は全体の構成を考えたり、必要な資料を集めて読んだり、書いたものに手を入れたりしている。「書く」というと書くことしか見えなくなるけど、書いている時が一番楽で、書くための環境や考えを整えている時の方が泥臭く、重苦しい。

ある料理を作るとしよう。火を通したり、味をつけたり、きれいに盛り付けることが「料理」っぽい。でも、「料理」に必要なのは、せいぜい15分とか30分くらいで、それよりも材料を集めたり、ある材料からメニューを決めたり、材料を切ったりといった下準備の方が何倍も時間がかかる。

洋服を作ることや本棚を作ることもそうだ。材料をそろえ、型紙をとったり、材木にけがきをしたりする。組み立てるのはあっという間で、それまでの面倒な作業が完成を左右する。ぱっと見、そういう風には見えないけど。
生き物だって、植物だって、完成形に至るまでの期間の方がずっと長い。セミとか、ホタルとか、夏野菜とかね。

 

なんでも、準備にとても時間がかかる。このことを覚えておくと、うまくいかないなと思う色々なことが、実は「準備中」ということで気楽に思えるんじゃないか。なんかちっとも進まないな、いいアイディアもでないし、という時は、それこそが、解決策を思いつくことや、一気に進むための準備期間なのかもしれない。それか、すごく疲れているかのどちらかだと思う。寝てみてだめなら、きっと準備期間。

準備期間であるということを認識できたら話は早い。
まず、準備期間の中で、今自分がどこにいるか確認すること。まだ準備運動にも入れていないのか、一通りトラックを走って肩慣らしはできているのか。どの段階化によって、次に打てる手が変わってくる。
自分の現在地がわかったら、ゴールまでの道のりに必要なことを把握する。これから先、どんな準備がいるのか、すでにどこまで準備ができているのか。大きいところから次第に細かくわけていって、だいたい1週間分くらいの分量まで落とし込む。
ここまできたら、あとは順に進めていくだけだ。あの材料が足りないから追加で集めよう、とか、集めた材料をもう少し吟味してみようとか、進めやすいところから手を付けていけばいい。できるだけ、こつこつと。
もし、これだけしても漠然としているのだとしたら、もっと簡単なタスクに分けていけばいい。9時になったら机につく、とか、パソコンを立ち上げて、まずはこれを入力しよう、とか。できるだけ、簡単なステップを踏む。

 

どんなものでも、同じじゃないかな。自分でどうにかできることと、できないことはあるだろうけど。それでも、目標や達成すべきゴールがあるとしたら、とりあえず、今の自分にできることとできないことをリストアップして、できることにだけ焦点をあてる。メールをチェックするでもいいし、10回腹筋するでもいいし、知らないお店に行って、食べたことのないものを注文する、でもいい。
誰かが「何から手をつけたらいいかわからない時は、なんでもいいから手をつけたほうがいい時」と言っていたけど、何かをしようと思ったら、そこから先することはすべて、成し遂げることのための「準備」くらいに思ってたらいいんじゃない?部屋の片づけを始めたり、ついついネットサーフィンしてしまったり、ちょっと散歩に出てしまったりしても、すべては「準備」。

ただ、準備期間がたっぷりとれるように、余裕をもってとりかからないとね。

 

 

 

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

 

当たり前のことしか書いてないけど、当たり前のことを日々積み重ねることが、どれだけ難しいことか。
帯にある「よい習慣は、才能を超える」という言葉を、どうかそうであってと思いながら信じている。