自分をごまかせ

秋は好きだけど、一応秋生まれだけど、秋との相性はよろしくない。
高校時代、部活の後輩に
「秋になるとやる気が出なくなるんだよね」という話をしたら、
「五月病の秋バージョンじゃね？」と軽くあしらわれたことがある。
まったくもってその通りだと思うので、以来、秋はそんな感じだと思うことにした。

たぶん、夏が暑ければ暑いほど「なんとしてでも乗り切らねば！」と思うので、その気合のせいで秋が深まる頃にはエネルギーが枯渇するのだろうと思う。

仕方がないので、「隠白（いんぱく）」というツボをぐいぐい押してみる。
自分の不調パターンの対処法は、長く漢方に通う中で大体身に着けられたので、これかな？と思うものを試していく。
気が滞っていそうだな、という時や消化器系がうまくいってなさそうだな、という時にはこのツボ押しが効く。

試しに、足の親指の内側、つまりもう一方の親指側の、爪の下の隅あたりの肉の部分を押してみてほしい。よくわからないと思うので、親指の爪のふち（肉）の、人差し指側じゃない方をまんべんなく、適当に。押せた？
すっとしてこない？気持ちいい人も、痛い人も、きっとどこか疲れてます（適当）。
わたしはこれで胃がごろごろ言い出して、何かすっと抜ける感じがしたので、あぁこれだったのだな、と思った。

自分なりの対処はどんぴしゃだったようで。
ついでに、
「歌を歌うくらいがちょうどいいですよ」
と診立てていただいたので、早速苦手な歌を歌うということに精を出した。

秋がだめなら対極の春がよかろう、ということで桜ソングを。
手始めにどうせ苦手ならばと、独特の声で敬遠していた福山雅治の桜坂。よく歌詞を意識したことはなかったけど、あれは失恋ソングだったのだ。たぶん。
それから河口恭吾の桜とか。これも片思いか。

春は出会いと別れの季節というけど、失恋や片思いが多くないか？出会いはどこに？
春って大変なんだな。
でも、秋のもの悲しさと妙にマッチしていて、失恋ソング、いいなと思う。

ついでに穂村弘のエッセイを読む。
もう、だんだん訳が分からないテンションと世界観になってくる。
恋焦がれた感。

そうこうしているうちに、気分もよくなってきて、食欲もわき始めた。
つい先日まで光合成で生きていきたいと思っていたのに。

 

 なんかもう、みんなこうして自分をごまかしていけばいいのでは？と思う。
ごまかすというか、ご機嫌をとる感じ。
そんなにやる気がなかったのか、じゃあ思い切り楽しいことしなよ、とか。
どうせ遅れまくりなんだから、一日二日のびたって大したことじゃないよ、だらだらしなよ、とか。
きっと自分を喜ばせれば自ずと能率もあがるので、とことん甘やかせ。
それも仕事のうち。

あたたかくして、お気に入りの甘ったるいお茶を淹れて、山ほどある読みたい本から一冊を引き抜いて、普段聞きもしない音楽をかける。そとはザーザー雨で。なんなら自分のためにケーキを焼こうか。

悪い方に自分をごまかすのが得意な人は多いけど、案外その逆は少ないかも。
みんな、じゃんじゃんごまかせばいい。
そう大きな損失は出ない。たぶん。