ゾウになる夢を見る

ぴったりくる言葉をさがすためのブログ。日々考えたこと、好きなこと。映画や本の話もしたい。

羊と土地のために、みたいな感じで生きたい 2019

平成元年生まれなので、今年で30歳になる。30歳。数字で書くとおっかなびっくりな感じ。二十歳前後くらいの時に「何歳くらいからがしっかりと大人だろう?」と考えた時、なんとなくだけど「28歳以降かな」という気がした。それは人として成熟しているとかそういうことではなくて、おおよそのことを一通り経験しているのではないかという意味で、実際その感覚に間違いはなかったなという気がしている。

 もっと年をとってみれば鼻で笑っちゃうようなことかもしれないけど、たとえば24歳で死んでしまうのと、29歳で死ぬのとでは、大きな差があるような気がしてね。以前はできるだけ長く生きたいと思っていたのに、最近は今死んでも無念というようなものはないように思えて(そもそも死んだら何もわからないし)、「受け取るものは受け取りきった」という気持ちが大きい。あるいは生死のとらえ方が変わったのかも。

 

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30年というのは長い。小中学生の頃、30年前と聞くととんでもなく昔のことに思えた。10年前という感覚すらわからないのだから無理もないんだけど。それが10年前のことが楽々思い出せるようになり、20年前のことも余裕で思い浮かべることができるようになった。年齢や若さに思い入れはなく、むしろおかしなことに「自分は30歳くらいな気がする」と、自分の感覚と年齢のちぐはぐさを思うことが10代後半くらいからあったので、やっとしっくりくる(中身が年齢に釣り合っているかは別)。30年も生きれるなんてすごいなと思うし、その間に自分を作ってきたものの膨大さにひるみそうにもなる。

だから、少なくともこれからの30年は、自分が受け取ってきたものを熟成させながら返していかないといけないのではないか、という気がしている。1年もの、5年もの、12年ものみたいな感じで。どうせ生きなきゃいけないのなら、フレッシュな人たちの歩く道の小石くらい、取り除くことくらいできたらなと思うから。運よく60年目を迎えるとしたら、その先どうすればいいのかはまだわからないけど、熟成還元を繰り返すうちに、自分というものや自分が手渡そうとしているのものが、それとはわからない形で周囲に溶け込んでしまう日がくるのでは、と予想する。木の葉が土にかえるみたいに。

 

受け取ることから返していくことへの準備期間が、この一年であったらと思う。
これ以上、積極的に望んで上手に入れたいものはない。記憶力が多少いいのか、執念深いのか、幼稚園くらいからのどうでもいい記憶をあれこれ取り出せる。それを眺めていくので十分だな、と思う。強いて言えば(一番難しいところだろうけど)、健康でありたい。でも、是が非でも健康でなくてはいけないというわけでもない。もちろん苦しくないに越したことはないけど、健康でないならないなりに、その中での健康を見つけられると知っているので。無敵じゃないか。

 
でも、じゃあどうする?というのが全くわからない。これまでに一つだけわかったのは、このわからなさが曲者だということ。このブログもそうだし、研究費という面でもそれがめちゃくちゃネックになっている。たぶん、自分というものから抜け出したところから、方法や伝え方を考え切れてないんだろうな、くらいの検討はついているけど。かと思えば、自由度の高い部分では(個人での発表や論文など)、局所的な評価をいただけたりする。受け止め方がものすごく分かれるのだ。「全然だめじゃない?その方法」というのと、「その方法にはあれやこれやが付き物だけど、ぜひとも貫いて」的なのと。だから一般的な方法をまねればいいかというと、そういうわけでもないんだろうな。そのあたりの調整をしていきたい。

 

そんなこんなをひっくるめると、「ふさわしいところでふさわしい部品になる(ための準備をする)」というのが今年の抱負と言えるかな。これにぴったりくると思うのが、「羊飼いの仕事の掟三カ条」。

一、自分自身ではなく、羊と土地のために働くこと。

二、「常に勝つことはできない」と自覚すること。

三、ただ黙々と働くこと。

『羊飼いの暮らし』より

 自分というものに執着せずに、自分を全体の中の一部と見ていく。何かの歯車になることは悪く考えられがちだけど、歯車(要素)が複数集まることで成り立つものというのは案外多い。そしてそれは、替えが効くものであるべきだ。歯車がだめになるまで、あるいはもっといい歯車が現れるまで、その一つの役目を果たせればそれでいいと思う。

歯車だって、なんだっていいわけじゃない。そのサイズ、形状でないと、というのがちょっとはある。できれば自分を削りすぎずに、大きく見せすぎずに…となると贅沢な感じだけど、そんな時は歯車になれる機械を、自分で作ったっていいよね。

自分はどの部分を担当するのか、できるのか、それをしっかり考えるということを 今年の目標にしたい。

羊飼いの暮らし──イギリス湖水地方の四季 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

羊飼いの暮らし──イギリス湖水地方の四季 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

文庫になったのでぜひ。

 

今週のお題「2019年の抱負」。お題に初挑戦してみました。