ゾウになる夢を見る

ぴったりくる言葉をさがすためのブログ。日々考えたこと、好きなこと。映画や本の話もしたい。

やさしくおもうこと

ときどき、誰かを大切に想いたくなる。数か月に1回か、半年に1回か。その気持ちは突然やってくるのだけど、当然だが特別大切な誰かはいない。透明人間か、名探偵コナンの犯人役の黒いシルエットみたいに名前も姿もよくわからない。そんな誰かがいてほしい、というよりは、気持ちの先にぽっかり穴が開いているような感じだ。

去年までなら、飼っている犬を特別可愛がった。世話をしてもらったり、おやつをもらったり、遊んでもらったりした後のにかーっとした笑顔(に見える表情)とその気持ちはとても相性がよかった。そんな彼女も、今はもういない。気持ちとの相性がよかっただけで、犬がいなくなったから、この気持ちが行き場をなくしたというわけでもない。

さみしいのとも少し違う。理由もなく湧き上がるあたたかで、やさしい気持ちの行き場がないだけなのだ。ホルモンバランスか何かなのだろうか。数か月に1回か、半年に1回の?恋愛対象がいないだけで、実は恋愛感情だけがあって、これはそういうもの?

毎度、特に何をするでもなくフェードアウトしていく気持ちなのだけど、とてもやわらかな気持ちなので、そのままにしておくのは少しもったいないような気がしている。だからといって、誰彼構わずやさしくしたいわけでもない。仕方がないから、気持ちに合いそうな本を読んだり、音楽を聴いたりする。
音楽は、誰かを想う気持ちを歌った歌がいい。


Ed Sheeran - Photograph (Official Music Video)

「僕(の写真)をジーンズのポケットに入れておいてね、また逢う日まで肌身離さず持っていれば、君は独りじゃないよ」なんて歌うような気持ち。そんな状況にはちっとも縁がないけど、そんな感じに押しつけがましくなくやさしく想う気持ちなので、曲を聴きながら歌の中の「僕」の気持ちになってみたりする。黒いシルエットの誰かに、「大丈夫だよ、独りにしないから。帰るまで待っていて」とか思ってみたりするのだ。柄にもなく。

 

なんというタイトルの本だっただろう。もう何年も前に読んだ仕事とか働き方についての本だったと思う。
筆者があとがきで、彼が5歳か6歳の娘に「幸せってなんだと思う?」と訊くのだ。その女の子は、「やさしくおもうこと」と答えたそうだ。その答えがとても好きで、母の知る同じ年頃の女の子に同じ質問をしてもらったこともある。その子の答えは「だいすきってこと」だったそうだ。
やさしくおもうことと、だいすきってこと。ふわふわと、でもしっかりとした重みがあるあたたかな気持ち。静かで、誰かを傷つけようもないまるい気持ち。見返りも求めない。その気持ちがあるということが、ただただ大事で。

これって、わたしの気持ちに近いのでは?と思って納得してみたりする。少し、違うような気もするけど、行き先もないのだけど、ひたすらやさしいから。
相手を求めているのでも、さみしく思っているのでも、何かが欠けているのでもない。
やさしく、大切に想いたくなる気持ちの正体は、ただわたし自身がしあわせだと思っているということなのかも。数か月に1回か、半年に1回。そう思うことにしよう。