ゾウになる夢を見る

ぴったりくる言葉をさがすためのブログ。日々考えたこと、好きなこと。映画や本の話もしたい。

アセクシャル(仮)とモラハラな彼(3)~告白バトル編~

アセクシャルかもということを考えるうえで切り離せない、10年前の出来事を振り返っています。
前回は、好きかどうかわからなくなっていくまでの話でした。

kirins.hateblo.jp 
今回は、付き合うことになるまでの話。好きかどうか、付き合うってなんなのか――次回以降のアセクシャル関連のこととつながるので、もうしばらくぐだぐだ感満載でお送りします。

 

 

 

メールが続いた夏休み明けに待っていたのは、「自白を強要されている取り調べ」……ではなく、そんな感じの告白でした。
好きだと告白されたことは数えるほどしかないですが、好きと言われてこんなにもつらかったことはなかったです。

久々の再会は「なぜメールを返してくれたのか」、「(Rのことを)どう思っているのか」ということを問いただされるところからはじまりました。
予期せぬ展開で、自分でもよくわからない気持ちや感情を説明しようにもなかなかうまくいきません。
一生懸命説明しようとするのですが、そのたびに問い詰められるので、自分の中から言葉がなくなっていく感じがしました。


そんなやり取りにしびれを切らしたRが、ついに「好きだ」と切り札を突き付けてきて、さぁ大変。
好きだと言われるとは思っていなかったし、Rは(わたしの大好きな)N先輩と付き合っていたのに――と困ってしまいます。

加えて、延々と繰り返される拉致のあかないやり取り。
君はどう思ってるのか。(この君って呼ばれ方、嫌いだった)
好きだからメールを返してくれたんじゃないのか。(メールは好き)
だってメール続けたいって言ったじゃないか。(言ってない)
わからないってどういうこと?(わからないってこと)


好きかどうかなんてよくわからなかったし、好きと言われながら責められる展開って初めてだし、誰しも喜んで人を傷つけたいなんて思わないわけで。
たぶんこの内容、半月くらいやってたんじゃないですかね。どちらもおかしかったとした思えない…。

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煮え切らないわたしに対して、先輩がとったのは強硬手段はさらにびっくり。
先輩の話し方からすると、「付き合ってる」ことになり始めたのです。
2人でいるときに写真を撮ろうとしたり、手をつなぐことになったり。
そのたびにどう思うか訊かれたと思うのですが、どうもこうもなんとも思いませんでした。
それなのに、「それ(わたしが懸命に説明したこと)って、俺のことが好きってことなんじゃないの?」と言われることが増え、自分で自分の気もちがわからなくなっていきました。

 18歳のわたしは、とても悩みました。
日記を見てみましょうか。

たぶんつきあいたいってことで(註:Rがわたしと)、つきあうって何だろうってわからなくて、だから今のままがよくて、なんでかって言うとなにもかもはなしたり、自分の気もちを言うってことはたいへんで、すきじゃなきゃできなくて、それほどすきになれるかとか、なってもらっていいかっていうと、わたしにはムリだと思った

けっこう早くに結論が出てました(下線部)。しかも、好きに「なってもらっていい」って……。 

 

 

こんな状態からなぜ付き合うことになったのか。不思議ですよね。
わたしも書きながら、これはちょっと…と思いました。
でもですね、これって全部少しずつ進んでるんです。「あれ?」と思う小さなことを放置している間に、それがどんどん積み重なって、何が正しいのか、自分が間違っているのか、そんな簡単なことすらよくわからなくなるんですよね。「好きかどうか」ということすらも。
何を話しても、もはや付き合うという選択肢しか残されていない感じで。

サーカスのゾウのたとえ話がありますが、「だめだ」ということが積み重なると(子どものころは鎖を切ることができない)、本当はできること(大人になれば鎖を切ることができる)も試そうとはしなくなってしまいます。
メール期間が子どものゾウの期間だとしたら、この告白のやり取りは大人のゾウになっていく期間で、通常なら「違う!」と言い切れることも、言い切れなくなっていたのです。

 

もちろん、ほかにも色々な要因がからんでいます。

 

今なら、そこはがんばるところじゃないよと思うんですけど、「ここで人と深く関わらなかったら、ずっと誰かをうわべだけでしか信じていけないんじゃないか」と当時のわたしは思っていました。

これは、「アセクシャルはわたしにとってあまり関係ないんじゃないか」と考えていることと重なるんですけど、わたしは恋愛感情の有無を抜きにして、誰かとすごく仲良くなりたい、仲良しでいたい、とかがあまりないんですね。とにかく一人が好きで、人間関係が希薄。
コミュニケーションも普通に取れるし(たぶん)、人前にも案外堂々と立てるし、表面的には何も困っていないんですが、その希薄さをなんとかしないといけないんじゃないかと悩んでいたようです。

さらに、よりどころ、逃げ場がなかったということも致命的でした。
こちらはRのメールと同時進行で起きていたことなのですが、夏休み中、家族が病気になり、国のお役所が登場するような大ごとになっていました。
この一大事は長期間続くことになるのですが、大学の友人との関係はまだ浅く、そのことを話せる人が近くにいませんでした。ちょうどメールをしていたRには少し話していましたし、Rとメールすることが現実逃避にもなっていたので、それを失っていいものかと少し迷ってしまったのです。

そして何より、自分でなんとかできる、と思ってたんですよね。
恋愛ってよくわからなくて…とお断りすれば、それで丸くおさまっていたので(少ない経験上)、ちゃんと説明できさえすればどうにかなるだろうと思っていました。

もちろん、誰かに相談したいという気持ちもあったと思います。ただ、恋愛がらみのことで、人はそれほど親身にならないのでは?とも思っていました。
たとえば高校時代、告白をお断りするまで毎朝(年単位だったはず)登校中に声をかけてくる同級生にとても困っていて、友人にも話していたのですが(今思えばこれもRタイプに近い)、あまり深刻には受け取ってもらえませんでした。それよりも、友人たちはそれぞれの恋愛に夢中でしたし、そちらの恋愛の問題の方が一大事でした。
とにかく、自分でなんとかしないと、と思っていたのです。

そんな色々が重なって、これくらいなんとかできると思っていましたが、できませんでしたね。こんなこともなんとかできない、というのが恥ずかしくもあったのでしょう。そんなこと気にせずに、早く誰かに助けを求めるべきでした。

 

終わりの見えない問答が続き、このままだとノイローゼになってしまうと思ったわたしは、「これだけわたしのことを批判するのだから、付き合えばいやになってすぐに別れられるだろう」と、ずいぶん消極的な理由でRと付き合うことにしました。

付き合うと決めてしまえば、出口のないトンネルにいるような日々が終わるはず、と思っていました。
でもどうしてか、まったくすっきりとした気持ちにはなれませんでした。

 

こうして決着がつくまでの間は食欲もなく、話し合う(ということ自体がそもそも変なんだけど)約束をし、その約束が近づくと吐き気がするまで悪化しました。付き合ってからもそうなんだけど、会う前にはトイレで吐き気を押さえてから約束の場所に向かうことが多かったです。
どう考えたっておかしいのに、言っていないことを言ったことにされたり、いろいろな言動を「好きなはず」に置き換えられたりして、何が普通なのかわからなくなっていたのだと思います。

告白ですらこうなので、付き合えばどうなるかは目に見えています。

さて、次回はいよいよ「スキンシップと違和感編」。
いろいろ省略して、アロマンティックやアセクシャルにつながる話をしていきます。

 

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